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③食事・療法食ガイド

何を食べさせればいいか、なぜ療法食が大切なのか、食べない猫への対処法まで

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慢性腎臓病(猫)

③食事・療法食ガイド

腎臓病のある猫を飼っている方から、最もよく聞く悩みがあります。

「療法食を全然食べてくれない」

それは多くの飼い主さんが経験することで、あなただけではありません。

食事管理は腎臓病治療の中でも最もエビデンスの強い介入です。薬より先に、食事。それがこの病気の基本です。ただ「正しい食事」よりも「食べ続けられる食事」の方が実際には大切で、そのための工夫が山ほどあります。

このページでは、腎臓病の食事管理の「なぜ」から「どうやって続けるか」まで、ノア動物病院の実際の取り組みも交えて解説します。

このページでわかること

腎臓病の食事管理で大切なこと(リン・タンパク・水分) / 療法食の種類と選び方 / 「食べない」ときの対処法 / ノア動物病院のテイスティングBARとは / AIM活性化療法食について / ステージ別の食事方針

1. なぜ食事管理がそんなに大切なのか

腎臓病の進行に最も深く関わる栄養素は「リン」です。リンが血液中に蓄積すると、腎臓の線維化(かたくなること)が進み、残っている機能をさらに奪っていきます。

療法食はこの「リン」を大幅に制限するように設計されています。一般のキャットフードと比べてリン含有量が少なく、腎臓への負担を軽くすることが目的です。

療法食を続けることは、最も優先すべき治療の基盤です

薬よりも、療法食の継続の方が長期的な腎機能保護効果が大きいというデータがあります。療法食を食べてもらえる環境をつくることが、腎臓病管理の最重要課題です。

食事管理で気をつける4つのポイント

順番 栄養素・要素 なぜ大切か ポイント
リン制限
★最重要
リン蓄積→副甲状腺ホルモン上昇→腎線維化促進。腎臓病の進行速度を最も左右する因子 目標値:Stage 2〜3で6.0 mg/dL未満。食事で届かない場合はリン吸着剤を追加
タンパク質の「質と量」 過剰なタンパクは窒素老廃物を増やし腎臓に負担。ただし制限しすぎると筋肉が落ちてQOLが下がる 「適正量の高消化性タンパク」が理想。療法食はこのバランスに設計済み
水分摂取 慢性的な脱水は腎臓への血流を低下させ、急速な悪化を招く。猫は本来水をあまり飲まない動物 ウェットフード中心に切り替える/給水器の設置/水皿を複数か所に置く
オメガ3脂肪酸 EPA・DHAには炎症抑制・糸球体保護の効果が示唆されている 多くの腎臓療法食にはオメガ3が配合されている。別途フィッシュオイルを追加することも

「腎臓食=タンパク制限」は間違いです

よく誤解されますが、タンパク質を極端に制限することは推奨されていません。筋肉が落ちると体重が減り、クレアチニンの評価も難しくなり、生命予後が悪化します。大切なのは「少なくていい」ではなく「良質なタンパクを適量」。腎臓療法食はそのバランスを考えて作られています。

2. 腎臓療法食にはどんな種類がある?

現在、国内で入手できる代表的な腎臓療法食を紹介します。味・テクスチャー・嗜好性はメーカーや製品によって大きく異なり、「うちの子はこれしか食べない」という組み合わせを見つけることが長期継続のカギです。

メーカー・商品名 ドライ ウェット 特徴・ポイント
ロイヤルカナン 腎臓サポート あり あり 嗜好性が高いと言われる。複数のフレーバーがあり飽き防止に使いやすい
ヒルズ k/d あり あり オメガ3脂肪酸を強化。魚や鶏肉などフレーバーのバリエーションあり
ピュリナ NF 腎臓 あり あり タンパク・リン・ナトリウムを抑えたバランス設計。柔らかいウェットが食べやすい
ドクターズケア 腎臓ケア あり あり 国内メーカー。食べやすい設計で療法食に慣れていない猫にも試しやすい

※ 上記は主な取り扱いブランドです。時期によって取り扱い製品が変わることがあります。最新の取り扱い状況はご来院時にご確認ください。

ドライ vs ウェット——どちらがいい?

ドライフード ウェットフード
水分 少ない(約10%)。水をよく飲む工夫が別途必要 多い(約75〜80%)。水分補給に直接つながる ◎
保存 長期保存できる。出しっぱなしにできる 開封後は冷蔵・当日中に食べきりが基本
食いつき 慣れていない猫には最初は食べにくいことも 香りが強く食いつきやすい傾向がある ◎
腎臓病での推奨 水をよく飲む猫・ドライを好む猫はOK 腎臓病では水分補給の観点からウェット中心を推奨 ◎

腎臓病では基本的にウェットフード中心への移行を推奨しています。ドライが好きな猫には、ドライを少量+ウェットを増やすミックス給餌も有効です。

3. ノア動物病院のテイスティングBAR——「食べてくれる療法食」を来院時に見つける

腎臓病治療で最も多い挫折理由は「猫が療法食を食べない」ことです。

療法食をネットで購入して帰ったが全く食べてくれなかった、やむなく一般フードに戻してしまった──そういうケースは非常によく見られます。

ノア動物病院では、この問題を根本から解決するために院内に「テイスティングBAR」を設置しています。

テイスティングBARの仕組み 内容
何ができる? ロイヤルカナン・ヒルズ k/d・ピュリナ NF・ドクターズケアなど主要メーカーの腎臓療法食を、来院時にその場で試食できます
どうやって試せる? 小皿に5種類ほど用意してその子に食べてもらいます(ドライは無料、ウェットは有料)
記録はどうなる? 食べたフードを「腎臓食カルテ」に記録。「うちの子が食べる療法食がわかる」状態で治療を始められます
誰でも利用できる? 腎臓病の診断・治療中の猫であれば、診察時にご希望をお伝えください

「試食サンプルを探している」方へ

「猫 腎臓 療法食 サンプル」で検索される方が多いですが、ノア動物病院ではその場で複数メーカーの療法食を試せるテイスティングBARを設置しています。ネットのサンプルを取り寄せるよりも、来院時に実際に食べてもらう方が確実です。

4. 猫が療法食を食べないときはどうすればいい?

療法食への切り替えは、多くの猫にとって簡単ではありません。ここでは実際に効果的な方法を紹介します。

切り替えのコツ

方法 やり方とポイント
少しずつ混ぜる 今のフードに療法食を少量(10〜20%)混ぜるところから始める。1〜2週間かけて徐々に療法食の割合を増やす。焦らないのがコツ
ウェットを先に試す ドライの療法食を嫌がる場合でも、ウェットは食べることが多い。まずウェットで慣れさせてからドライに移行する方法も有効
温める 冷蔵庫から出したウェットフードは電子レンジで少し温めると香りが強くなり食いつきがよくなることがある。猫は体温程度(38℃前後)を好む
お湯でふやかす ドライフードをお湯でふやかすと香りと食感が変わり食べやすくなることがある
少量頻回に切り替える 1日2回の大盛りより、1日3〜4回の少量の方が食いつきがいいことがある。特にStage 3以降は少量頻回が食欲維持に有効
食器を変える ひげが食器の縁に当たることを嫌がる猫がいる。浅くて広い皿に変えると食べやすくなることも
複数メーカーをローテーション 同じ療法食を食べ続けて飽きてしまうケースがある。ノア動物病院のテイスティングBARで複数の「食べられる療法食」を見つけておくと、ローテーションがしやすい

「どうしても食べない」ときの考え方

食欲低下が続く場合、療法食の問題ではなく腎臓病の進行・吐き気・口内炎・歯の痛みなど別の問題が隠れていることがあります。「食べない」が2〜3日続く場合は早めにご相談ください。

絶対にやってはいけないこと

「食べないから」と無理やり食事を制限するのは厳禁です。猫は数日間食べないと「肝リピドーシス(脂肪肝)」を起こすことがあり、腎臓病と合わさって命に関わることがあります。
「まず食べてもらうこと」が最優先。食事の「質」は次のステップで整えていくものです。

5. ステージ別の食事方針

食事管理の内容はIRIS(アイリス)ステージによって少し変わります。

ステージ 食事の方向性 具体的な対応
Stage 1 高リン食・高ナトリウム食を避ける 完全な療法食への移行は必須ではないが、一般フードの中でもリン・ナトリウムの少ないものを選ぶ
Stage 2 腎臓療法食への本格移行 リン管理目標値6.0 mg/dL未満を目指す。ウェット中心に。テイスティングBARで「食べられる療法食」を確認してから始める
Stage 3 「食べられること」を最優先に 食欲低下が顕著な場合は「食べられるものを食べられるだけ」優先。リン管理は継続しつつ、少量頻回給餌・食欲増進薬(ミルタザピンなど)を組み合わせる
Stage 4 カロリー確保が最優先 体重維持・栄養確保を優先。療法食へのこだわりよりも「少しでも食べてもらえるもの」を担当獣医師と相談しながら選ぶ

6. 猫の水分摂取を増やすにはどうすればいい?

猫はもともと水をあまり飲まない動物です。乾燥地帯出身ということもあり、「喉が渇いてから飲む」習慣が薄く、気づいたら慢性的に脱水状態になっていることがあります。

  • ウェットフード中心に切り替える(水分量が最も効率よく増える)
  • 水皿を複数か所(寝る場所・食事場所・トイレ近く)に置く
  • 流水式の給水器を使う(流れる水を好む猫が多い)
  • 水皿を毎日洗って清潔に保つ(古い水は飲まないことが多い)
  • ドライフードにお湯を少し混ぜてスープ状にする
  • フード後に少量のぬるま湯を与える

1日の飲水量の目安

猫の理想的な水分摂取量は体重1 kgあたり約40〜60mL程度です(※食事に含まれる水分も含めた1日の合計量です)。体重4kgの猫なら1日160〜240mLが目安。ウェットフードを100g食べると約75〜80mLの水分が補給できます。「トイレの量が増えたから水を飲みすぎ」ではなく、「多尿を補うために多飲」が腎臓病では起きています。

7. よくある質問

Q

療法食じゃないフードを少し与えてもいいですか?

A
完全にゼロにする必要はないですが、「少し」がいつの間にか「かなり」になるのがリスクです。食事管理の効果は継続率に直結するので、一般フードを与えるなら「1日のカロリーの10%以内」などルールを決めて担当医師に確認することをおすすめします。
Q

手作りご飯はダメですか?

A
手作りご飯で腎臓病に必要なリン・タンパク・ナトリウムのバランスを管理するのは非常に難しく、リン含有量のコントロールが特に困難です。療法食は長年の研究で「このバランス」に調整されているため、手作りへの完全移行はあまり推奨されません。一部補完的に使いたい場合は担当医師に相談してください。
Q

市販のキャットフードで「腎臓に良い」と書いてあるものはどうですか?

A
「腎臓に良い」という表示はあくまで一般食向けの宣伝文句で、獣医師が処方する療法食とは別物です。リン含有量・タンパク量の設計が根本的に異なります。腎臓病の診断を受けたあとは、獣医師が処方する療法食を使用してください。
Q

AIM(エーアイエム)フードを食べさせれば、他の療法食をやめてもいいですか?

A
やめないでください。AIMはタンパク質であり、口から食べると胃で消化・分解されるため、経口摂取では腎臓に届きません。AIM関連の市販フード・サプリに治療効果はなく、当院での取り扱いもありません。既に治療中の療法食・薬物療法を絶対にやめないでください。
Q

療法食は何歳から始めるべきですか?

A
腎臓病の診断(またはステージ分類)を受けた時点で始めるのが基本です。Stage 1では必須ではないケースもありますが、早めにリン制限食・水分摂取改善を始めることは進行抑制に有効です。7歳以上の猫は年4回の腎臓健診を受けることで、最適なタイミングで食事管理を始められます。

8. まとめ

腎臓病の食事管理は「療法食を与える」ことよりも「食べ続けてもらう」ことが本当の目標です。

その子が食べてくれる療法食を見つけること、水分をしっかり摂ってもらうこと、ステージに合った管理を続けること──そのサポートをノア動物病院は一緒に考えます。

ノア動物病院(山梨/東京・八王子)

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ノア動物病院では、腎臓病と付き合っていくだけではなく「ならせない」ケアに力を入れています。
小さなお悩みでも、ぜひお気軽にご来院ください。

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